The Grimoire Archive
グリモア トラッカー 書物

あなたなの?

私を見つけてくれたのがあなただったことをうれしく思う。 私はこの盗まれた目で数多くの恐ろしい出来事を予見してきた。しかし未来を知りたいと切実に願うようになった今この時になって、私はたった一つのキボボボウにすら確信が持てない。ガーディアンよ、このメッセージを読んでいるのは、きっとあなたね。あなた以外に私を探す人はいないわ。イコラはいざとなればヒドゥンが戻ってくると信じている。ケイドは、私がいなくてさびしいと認めるぐらいなら、樽に入ってエンジジェルフォールを下ることを選ぶでしょう。ザヴァラの心配事がずらりと並んだリストの一番上に、私の名前が来ることはない。 つまり、わざわざ私を探してくれるのはあなたしかいないのよ。 私があなたの助けを必要としたことは一度もなかった。私はひからびた死体でもなければ、壊れたゴーストでもなかった。通信機の向こうから漏れてくる断末魔の声でもない。私はあの穴蔵から自力で這い出して、タワワーまで一人で戻ったのよ。そしてもし私が…あなたを乱暴にハイヴに投げつけたり、復讐の道具としてあなたを使ったように思われてしまったなら、これだけは信じて欲しい。私が歓喜に少しでも近い何かを感じることができるとしたら、それはあなたの勝利に他ならないことを。 私に聞きたいことがあるんでしょう? 私が女王と手を組み、何を画策したのか? オリックスが倒れたあと、私がどんな運命を受け入れたか? 夢が悪夢に成り果てたこの街で、一体何が起こっているのか? 私はかつて、あなたがオリックスを倒すための道しるべになった。そして今度はこの呪いを解くために、あなたを導いてあげたい。でも「夢見見るる都市」では、ハイヴの秘密の世界と同様、演技と演者の間にほとんど違いはない。 私の答えを理解してもらうには、私自身を理解してもらわねばならない。 私のゴーストと「光」は、ハイヴとの戦いの際に失われてしまった。私はアウォークンの女王と共謀して、ハイヴの王であるオリックスと彼の息子のクロロロタを倒し、女王マラを宇宙という名のゲーム盤のプレイヤーにすることを目論んだ。来るべき戦いに備えるために、私はあなたのタワーから逃げ出し、「叫びの海」に潜り込んだ。そこはハイヴの魔法の深遠の探求者なら、誰にでも門戸を開いていた。 こういう手紙を女王の贈り物に忍び込ませることができるのは、星の位置が正しいときだけ。次の手紙と、それに伴う真実の始まりを待って欲しい。でもあなたに誓うわ。あなたが私をどれくらい信頼しているか分からないけど、私の物語が終わるとき、あなたは本当の私を知るでしょう。 最初の人生において、私はエリシア・ピャトヴァ=シェンとして生まれた。トラベラーの閉鎖性から抜け出した元ガーディアンにありがちだけど、私は当時のPRIVATE暮らしをはっきり覚えている。再婚した両親の最初の娘だった私は、サンクトペテルブルクに住んでいた。22世紀の地球に生きる、至極せっかちな子供だった。家族は仕事の都合でジャカルタ、カムチャツカ、ラゴスを転々とし、ほったらかしにされることが多かった私は、氷のように冷たいネヴァ湾で泳いで日々を過ごした。 私は泳ぐことが大好きだった。ネヴァ湾の冷たく浅い水の透明さ、真冬の夜明けのような清々しさが、何よりのお気に入りだった。巨大なズーブル9型ホバーバージが湾内を走り回っていた。みじめな自動車産業と違って、ロシアの海上交通は近代化が進んでいたのよ。子供の頃は…私がこんな風に気楽な感じで話をするのは変? 子供の頃は、両親が持っていた「ヒョードル」という小型ドローンの近くで泳ぐようにしていた。猛スピードで走るホバークラフトのスカートに巻き込まれたら、私の体は小さなレーズンのようにバラバラになってしまうから。でも少し大人になると、私は向こう見ずな仲間達の影響を受けるようになった。黄金時代の寿命を持つ人達は息苦しいほど死を恐れていたけど、彼らはそういう姿勢に反発していた。程なくして私は、子供用の安全スーツとヒョードルの厳重な監視を疎ましく思うようになった。 17歳の頃、仲間にけしかけられた私は、ウェットスーツに身を包み、迫りくるホバーバージのスカートの下に潜り込んだ。それほど危険な行動ではなかったのかもしれない。もし私が双子座で怪我をしそうになったら、ホバークラフトはコースを変更して私をよけてくれただろう。でもとにかく私は「死ぬ」と思った。そして巨大な機械は私の上を通り過ぎ、私は轟音を立てるプロペラの下で震えていた。あの時私は、後に覚えた「光」にとても近い何かを感じていた。それはヒロイズムだったのかもしれない。あるいは死の縁で感じる存在だったのかも。 甚大なる神のような力とすれ違って、何とか生き延びたのは、それが最初だった。 私が死んだのは、それから20年以上経って、サンクトペテルブルクからストックホルムまで冬の海を介助なしで泳いだときよ。地獄の溶鉱炉のような大寒波にやられたの。もちろん警告は受けていたわ。完ぺきにトレーニングを積み、嫌というほど脂肪を蓄え、高性能スーツで身を固めても、自殺行為だと。でも当時は、めくるめく底なしの勇気がもてはやされる時代だった。だから自殺まがいのことでもしないと、偉業を成し遂げたとは誰も認めてくれなかった。だから自分がやったことを後悔はしない。私が後々Dyad耐えることになるあの試練を…より長く、より陰うつで、すさまじく残酷なあの試練に対して、死は私を準備させてくれたのよ。私のゴーストが、もっと若い頃の私や、もっと気楽に何かを決断していた頃の私ではなく、あの泳いでいる女性のイメージで私を映し出したのは、偶然じゃない。