The Grimoire Archive
グリモア トラッカー 書物

慣れ親しんだ顔

会うなり神経を逆なでしてくるような人物に会ったことはあるだろうか? 彼らは一見すると人懐っこい——ただ、実に独特なフレンドリーさなのだ。若いころは様々な種類のフレンドリーさに気付けないが、ただ経験を積めば、それが理解できるようになる。本物の親切心から来ているものにはなかなかお目にかかれない。中には、平時限定のフレンドリーさや、何かがほしい時のフレンドリーさや、フレンドリーさをアピールするためのフレンドリーさもある。特に最後のフレンドリーさには必ず何かしら裏がある、そしてそういった人はそれを隠そうとする。 放浪者とやらも、最後のグループに含まれる。他人のことを悪くは言いたくない、だが彼はどうだろう? どうも信用できない。 彼があのゲートの先で何をやっているのかは知らないし、知りたくもない。彼とは何度か話したことがあるだけだ。彼はいつも忙しそうにしている。 自己紹介がてらに話した時は、すぐに会話が終わった。彼は私の質問に答える前にその場から立ち去ってしまった。暁旦の祭が始まる直前のことだった。私が飾り付けをしている時に、彼が私の店に来てこう尋ねた。「何かあるのか?」 「暁旦のことは知っているでしょ?」私はそう言った——失礼な言い方ではなく、フレンドリーに。あなたがつかみ所のない人物だとは知っているわよと伝える感じだ。 「ああ、もちろんだ」と彼は答えた。「もうそんな時期だったんだな。時間が過ぎるのは早いな? あっという間だ」彼は腰に手を当ててしばらく飾り付けを見ると、満足げにうなずいた。 「そうね」と私は言った。「ところで、聞きたかったことが——」 「実は」と言うと彼は続けた。「実際に暁旦を祝っている場所に来たのは初めてなんだ。いくつか教えてくれないか?」 私はそこまで年寄りではないが、無知な子供でもない。人生経験のあるエヴァは、嘘を聞けばすぐに分かる。とにかく私は少しだけ時間を割いてこの祭について話し、私たちの伝統とその意味を説明した。彼は興味深そうに何度もうなずいていた。私は話題を彼に戻すことにした。 「それで、放浪者、あなたはどこから——」 「それでは、そろそろ行くとしよう!」彼は私の質問が聞こえなかったふりをして、さらに付け加えた。「もうこれ以上、邪魔をするのは申し訳ない——残された時間がどれだけあるかなんて誰にも分からないからな」そう言って彼は立ち去ると、背中越しに「素敵な装飾だ! 色合いが素晴らしい!」と言い、街角に姿を消した。 他の人がこの奇妙な男の話をしていたのを聞いたことがある。多くの人が口を揃えて同じことを言う。少しミステリアスだが、とてもフレンドリーだと。その一方で、口に出したくないような話も聞いた。あまりに悲惨で、にわかには信じがたい内容だ、不確かな噂を広めるつもりもない。私は、彼の食生活が私たちと同じだと信じている。 とにかく、彼は少し変わっている。注意しておいたほうがいい。 ——- 闇チョコレートのかけら: 宿りのバターとヌルテイストを混ぜてから暁旦のエッセンスを加えて焼く。