記録VIII
聖杯の司祭、マッチの回顧録。我が聖堂が建つリヴァイアサンより。今日は、現在と未来の支配者であるカルス皇帝への賞賛でY-聖杯を満たす。皇帝の寛大さを祖先が知ることができるように。
皇帝に話した。
皇帝は、死に向けて全ての準備を整える場所を決めた。リヴァイアサンの航路は遙か彼方の星系、トラベラーが待ち受ける場所に設定された。彼の影達は既に、ガウルを殺すため出発した後だった。自分が死ぬかもしれない命がけの任務だ。このような終焉の時に、どうして皇帝を裏切れるだろう。打ち明けてくれと言われて、それでも尚秘密を抱えるなど。
私は、王宮のプールで水浴びしている皇帝に会いに行った。彼の複製達は当然ながら、かつての皇帝の姿と同じく非常に感覚が優れているからだ。私は衣服を脱ぎ、彼の隣に腰掛けた。私と皇帝の仲だ、何もためらうことはなかった。
「陛下」。私は口を開いた。「隠していたことがあります」
私は、祖先や祖先の精霊に満ちた聖杯を自分がどのように崇敬しているか説明した。内心では、皇帝よりもそれらの信仰に重きを置いてきたことも打ち明けた。私は話した。我が一族が信じた古き神の意志が、我々の前身を精神浸食だけで支配した重荷が、あらゆる凡人に神聖な輝きを見出そうという私の信念をいかに滅ぼし尽くしたかを。皇帝は黙って耳を傾けていた。
「マッチ。お前は罪を犯した。そしてワシは判決を言い渡すだろう。だが、その前にひとつ教えてほしい。クリプスに対するワシの判断は正しかったと思うか?」
「いいえ」と私は認めた。
「多くの命を奪ったからか?」
「左様です、陛下」
「だが、ワシが奪わずとも間もなく終わる命だとわかっていたのだ。大勢を殺すことで、残りのごく少数が争いではなく幸せのうちに生きられるとわかっていた… 考え得る限りで最善の選択だとは思わないか?」
「陛下、私には信仰があります。おそらくそれ故に、生き延びた少数の幸福な者達よりも、クリプス人達の共通の苦しみを公平だと思うのでしょう。もし私がクリプスの1人であれば、公平な機会を望むでしょう。はるかな高みから一方的に決定されるのではなく」
皇帝は深く頷いた。「それはわかる。以前はワシも公平であろうとしていたのだ。生まれた階級や種族に関わらず、あらゆる人民が豊かに暮らす帝国をな。臣民の生活水準を高めるのは、支配者にとっても益がある。だがもしその支配者が、絶対的な証拠を手に入れたとしたらどうだ? 存在とはゼロサムゲームに過ぎないという証拠をだ。あらゆる者に平等な人生を与えられるだけの時間や労力はないという証拠だ。それを知ったなら、選ばれた少数を優先すべきではないか?」
わからない。そしてそう認めざるを得なかった。
「構わん。確証が欲しいわけではない」。皇帝は立ち上がり、プールが波立った。「クーデターの後、ワシは長い間無限の宇宙を眺めていた。そしてわかったのは… 無意味さだ。永遠に続く宇宙には、無数のカルスが存在するに違いない。そしてそのどれもが同じ虚空を見つめているだろう。もしワシがどこにでもいる存在ならば… どうして神になどなれようか」
「だがこれから先に何が起きるか知った今、我々に与えられた時間に限りがある今となっては… 残酷に聞こえるかもしれないが、自分以外の存在が少なければ少ないほど、ワシの存在意義が増すのだ。ワシはこの世の最後の善きものでありたい。選び抜いた仲間を呼び寄せ、終わりが来るまでの間はできる限り苦しみを和らげたい。死を逃れるためなら、どんな姿にもなるという皇帝もいるだろう。だがワシは違う。ワシは自分を偽るつもりはない。そして、マッチ、お前もそうだ」
彼は大いなる優しさで私の背中を軽く叩いた。「我がカウンシラーよ、お前の唯一の罪は、ワシがお前に贈り物をする機会を与えてくれなかったことだ。さあ、お前が望む場所とお前が求める大きさを言ってくれ。聖堂を建てよう。お前が何の憂いもなく信仰に身を注げるようにな。ワシが望むのはただひとつ、お前が祈る際にワシを思い起こしてくれることだ」