2 つの独房
ペトラが1度で済みそうな通信を2回してきた。どうもケイドが何か大変なものを持ち帰ったらしい。動揺のあまり思考がまとまっていない。バリクスはエーテルを吸うことにした。おそらくケイドは、ついにフィクルルを見つけたのだろう。それならば力強く、堂々と立っていなければならない。
大きな歩幅でゆったり歩く。体内を巡るエーテルが、彼の体躯を鉛直に伸ばし、一歩一歩が威風を払った。マックスセックウィングの上で彼の操作する手はしきりに動く。空の独房を2部屋用意し、抽出サービターを置く。その間ずっと、フィクルルに審判を下す想像をしながら悦に入っていた。作業を終え、部屋を出て待った。
囚人らは怒鳴り、叫びながら棟に入って来た。1人はエリクスニーで、ペトラが低温監禁室の片方へ乱暴に押し込んだ。フォールンががっくり膝をつくと、彼女は独房の扉を封鎖した。
バリクスは歓喜のあまり、面目を失った巨漢のフィクルルを見ていられなかった。バロンの命綱、かつて信頼し合った共謀者にして重大なる裏切り者、フィクルル。抽出サービターが音を立てて起動し、異端者のアルコンから貴重なエーテルを絞り出す。興奮を禁じ得ない光景だ。バリクスとフィクルルの視線が、深く深く交錯した。鼓動ひとつの間に、何世紀もの歴史が2人の間を通り抜ける。
フィクルルが笑った。
訝って後ずさるバリクス。ケイドがみすぼらしいヒューマノイドを連行してきたのだ。頭に袋がかぶせてあり、顔はわからない。ケイドはぞんざいにフードを破り、そのヒューマノイド——アウォークンの男だった——を、開いた独房に押しやった。
「じっとしてろ!」ケイドは犬に言うように命令した。
手と膝をつき、見知らぬ男がハンターを見上げた。いや、見知らぬ男などではなかった。露わになったのは、乱れた漆黒の髪に青い肌、そして射貫くような黄色の瞳。
「バリクス...?」
ユルドレン・ソヴ——女王の双子にしてアウォークンの王子、リーフの後継者の顔がそこにあった。