The Grimoire Archive
グリモア トラッカー 書物

第12章

あの者がここにいると聞いたとき、私はどれほど神経を高ぶらせ、恐れただろうか。あの者といっても、それは朽ちた残骸にすぎない。そうだとしても、そのことを誰にも、どこにも語ることができないという状況に、自分は正気を失ってしまうのではないかと思った。だが、彼らは私を信頼すると言った。私ならきっと耐えられると。だから私もそう言い、地下の沈黙の中でじっと見守ってきたのだ。 私は幾夜も距離を保ったまま目を離さなかった。あの者は私を見ることも、感じることも、知ることもできない。私には確固たる決意があったが、それはあの者も同じだったようだ。 トン、トトン、トトン その時私は聞いたのだ。規則的で優しい鼓動を。それは私に呼びかけ、後を追うように要求する揺るぎない太鼓の音だった。いや、虫の音だ。風の音だ。そう自分に言い聞かせた。完全な推測という架空の繭に閉じこもるように。 私はこの場所からいなくなりたいと思った。 だが彼らは私を信頼すると言った。私ならきっと耐えられると。そう彼らは確信し、見守る役目を私に託した。 その音は幾度となく私を求めたが、そのうち耐えきれずに勢いを増していった。その音は大きく無遠慮で、私の頭を満たし、轟音を響き渡らせた。 それは心臓の脈動。 あの者を見なければ。感じなければ。知らなければ。この思いがいかにして私の精神に入ってきたのかは分からないが、それはいつまでも私の中に残り続けた。 トトン、トトン、トトン 私はあの者の容器に手を置いた。 トトン、トトン、トトン 私はその場所であの者を両手に抱え、深く濃い闇に向かって叫んだ。 ――『孤独な心臓』からの抜粋