積み重ね
アーカイブは静まり返っていた。スタッフは暁旦の祭事のために早々に帰宅し、仕事熱心なシティのフレームだけが秩序を保とうと動き回り、鉄のケースを纏った石英の保管プレートにそっと吹き付ける清浄機の柔らかな風の音しか聞こえなかった。フレームは、古代メソポタミア文明ニネヴェの名も無き司書の亡霊に憑りつかれていて、侵入者の眼をくり抜こうとしているのだとラトビアは勝手に空想していた。司書のガーディアンというのは果たしているだろうか。透明になれるガーディアンは?もしかしたら今も自分の真後ろにいて、図書館に侵入した者たちの眼に覆われた亡霊がいるのでは——
思わずゾッとしてしまい、足場から踏み外してしまうところだった。気を紛らわすために舌を軽く噛みしめ、痛む脚の体勢を整え、調べものを続けた。シュールの呟いていたキーワードを探すため、既に何時間も音声記録を再生していた。あとは足取りを辿るだけだ…
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>ナイン 9 IX ダスト 惑星の並び
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シミズ、その他数名「ダークマター検知の重大な異変は重力体の接触によるものではない」ポスト大崩壊宇宙論的復興ジャーナル Vol. 99 #1012
ゴンザレス、ハリ-4、およびムワンギ「軌道力学の位相的T遺伝子の複雑系機能におけるダークマター検知の異変」ポスト大崩壊宇宙論的復興ジャーナル Vol. 99 #1014
シミズ、その他数名「ダークマター検知の重大な異変はCDM流出自己相互作用の目的論的なモデルなしでは説明できない」ポスト大崩壊宇宙論的復興ジャーナル Vol. 99 #1015
ゴンザレス、ハリ-5、およびムワンギ「質量と暗黒恒星風のスケールバリアント結合の非目的論的な結果におけるコールドダークマターの異方性」ポスト大崩壊宇宙論的復興ジャーナル Vol. 99 #1015 付属 1
シミズ、その他数名「非重複教導権の原理、または干渉?シティ防衛を目的とした科学機器の再配置の『必然的押収』の役割」ポストレッド政治の新思考 Vol. 1 #18.
ラクシュミ II、ハリ-5「認知洞察の逸脱はエクソリセット症候群を引き起こすか?事例研究」未発行アーカイブ資料、個人コレクション。
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妙だ。どうにも妙だ… ダークマターの恒星風が太陽系に存在するという、どんな子供でも一度は必ず学校で教わる(そしてすぐに忘れ二度と思い出すことはない)銀河系の天候の基本的なことばかりが書かれている。
彼女の頭皮に何かが触れた。
ラビニアが飛び上がった。悲鳴をあげる一歩手前だ。暗闇の中では肉眼では視認が難しいセンサー・マイトが、空気の流れに乗って通過した。こちらの体温を探知しており、もし個人を特定されるようなことがあれば——マスターの命により下水道グラフィティの民族学的研究について書かされる羽目になるだろう。
ラビニアは急いで次のキーワードを入力した。「ラッキー・ラビニアの名にかけて、お願い」あだ名は気に入らないが神頼みをする気持ちで呟いた。
>ナイン 9 IX レッドリージョン シティへのガウルの攻撃 未検知 予期せぬ 警告なし なぜ
>検索結果
シティ侵略占領総意委員会(CCIOC)「最終レポート:13章:レッドリージョン戦闘政策および戦略的奇襲の問題」フリードキュメント
CCIOC「最終レポート付属:シティの失策、シティ同盟の早期警告、インテリジェンス・システム」未発行/校正済みドキュメント: シティ警備に関与。
CCIOC「最終レポート付属:『任意諜報活動の文化:ファクション諜報員に対するタワーの開放性および未知のベンダー組織(通称UEV)』」未発行/校正済みドキュメント: シティ警備に関与。
シミズ、ハッサン「レッドリージョンのシティへの侵略直前に謎のCDM自己相互作用が発生: 偶然か、あるいは意図的名妨害か?」不採用の原稿、シミズ・アカデミック・ストア
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>なぜ『レッドリージョンのシティへの侵略直前に…』を不採用にしたのか
不採用通知「原稿はコールドダークマターがシティのセンサーに干渉するというメカニズムが十分に説明されていないという校閲者の判断により不採用。レッドリージョンの潜行はサイオンの諜報員が引き起こした電波障害に起因すると軍事専門家は断定」
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ラビニアの動きが固まった。足のついた、非常に小さな何かが彼女の耳の周りを這っていた。ゆっくりと手を上げようとするが間に合わず、小さいセンサー・マイトは中へ入っていった。
羽音を鳴らしたと思うと、その音が小さな声に変わった。「ガルシア・ウムル・タウィル卿」とマスター・ラフールが言った。「ご説明いただけますかな?」