記録1: 歴史を突き動かす力
僕は苦痛に強い方だと自覚しているが、カイアトルの官僚主義にはもう耐えかねた。
今回の戦闘ライフルの設計をまたもやカイアトルの試験にかけるのが億劫で仕方がない。普通なら、ライバルの鋳造所とやり合うとなると多少は元気が出るが、今回ばかりは違う。近頃は、自分が酷い事故か事件に巻き込まれでもしないかと願うようになった。頭の上に隕石でも落ちれば、何度も何度も同じ許可を出さずに済む。
カバルが帝国を築き上げることができたのは、彼らのリージョンの裏に補給担当官、兵站学者、工場長、そして銃器技師たちの軍団がいたからだ。星々を跪かせたのは兵士だが、それを可能にしたのは、彼らに食料、燃料、そして兵器を配給した者たちのおかげだ。カバルの兵士たちを傲慢な連中だと思うかもしれないが、衰退の一途を辿るカバルの中で最も傲慢なのは官僚たちだ!
彼らはライフルを握りしめる国境警備隊のように列や表、そして制限を振りかざす。兵士たちが求めているものを与えようとすると、どこからともなく補給担当官がのしのしとやってきて、コストがかかるからそんなことはするなと言う。官僚というのは、夢を見ることもせず、コストや資産、そして制限に支配された偏狭な連中だ。制限なんか知るか! 工場長や会計士もクビにしてしまえばいい。自分のやりたいようにやればいいさ!
作業場から姿を現わした父さんに言っても、テックス・メカニカの「ブランド」が旧世界の品格とスタイルから逸脱するべきではないとしか言わない。父さんはセンチメンタルな愚図だ。いちいち父さんの許可を取らなければいけないのには、もううんざりだ。旧世界では、些細なことで人を殺すのが当たり前だった。先人たちは石を投げ、棒で戦った。そろそろ僕らも新しい何かをつくるべきだ。テックス・メカニカが僕のものになるまでは、父さんに逆らってでも、この鋳造所を未来に引きずり込んでやる。僕は兵士たちと、挑戦する者たちの声を聞き入れる。僕は、民意の代弁者であるべき指導者たちに力を与える大衆の意志を尊重することで、過去の時代に敬意を払う。
父さんもそのうちわかってくれるはずだ。わからせてやる。でもそれまでは、現場の仲間たちと過ごすとしよう。連絡役と僕の武器を試験する部隊の指揮官を務めるブラカス・ルームは僕の考えを理解し、賛同してくれる。僕らはいろんなことについて、何時間も語り合った。制服を着たならず者の彼は、僕の創作意欲を掻き立ててくれる。彼は指揮官に従う兵士という立場でカイアトルを尊敬しているが、その話を聞いていれば、彼の本心を察することは難しくない。彼はカルスが皇帝になる前の志すべき時代を想起させてくれる。「太陽に捧げる帝国を築き上げる前の時代」彼はそう言っていた。勇敢なるブラカス・ルームも僕と同じように、夢を持っている。それは解放され、歴史を目覚めさせて未来へと突き進む夢だ。ルームが志す帝国、トロバトルには心を動かされた。僕たちは同じ未来を夢見ていたんだ。
ルームのような夢を見る者たちの未来を実現するためには、どのような兵器をつくる必要があるのだろうか? 設計者やエンジニアたちにはこの質問に答えてもらわなくてはならない。窮地とその先の世界で振るうことができる武器があれば。使用者の力に匹敵する強力な道具。僕はルームに相応しい武器をつくるための器となる。もちろん、これは商業的な志でもあるが、僕の意欲はそんな軽薄なものじゃない。僕たちが製造しているのは兵器だ、砂糖水じゃない。僕たちは、意味を持たない金属から現実世界の支柱を揺さぶる力の象徴を作り出す。その咆哮は、王や暴君でさえも生身の人間にしてしまう。そして、解放者の銃の銃身には、「テックス・メカニカ」と刻まれる。僕たちは歴史を突き動かす力となる。僕とルームでその道を切り開くんだ。
これからも官僚の相手をすることになるだろうが、忠実な従者が傍にいてくれるだけマシだ。僕たちは共にデスクワークに縛られた小ぎれいなエリートたちから勝利を掴み取る。ペン先や完璧な集計表、予算の調整で世界を支配できると思い込んでいる連中に、決定権を持つべきなのは、夢を見る者たちなんだってことを見せつけてやる。意欲に満ちた人たちが結託し、グリマーの山の上に座る者たちから歴史の航路を決める舵を奪い取るんだ。
もうすぐ、夢を見る者たちが先導する時代が訪れる。