マグノリア
「ここに仮想で出ないでもらえない?」エイヴァはデジタル投射像と視線を合わせることができなかった。本物の人間が相手だったとしてもできるかどうか分からないが、それ自体が現状を思い起こさせてしまう。
「ごめんなさい」マギーはそう言って不可能を認めた。「でも、まだアップロードしていない緊急対応担当に来てもらうこともできるわ。数分かかっちゃうけど。それまで、一緒に座ってもいい?」
決断は難しかった。「いいけど」
マグノリアは座った。具体的には彼女のバーチャル投射像がソファの上で、エイヴァの視線の高さに落ち着き、彼女はアパート内を見回した。その視線が馴染みのある絵で止まる。
「あら。あれって『レイドインベーダー』のビンテージポスター?」
エイヴァの体がぴくりと反応する。そして長い沈黙を経てから、うなずいた。「うん。お爺ちゃんのものだったの。一番最初の作品の予約特典だったんだって」
「すごいわ。新しいシリーズを制作中って話だったけど、楽しみ? プルナディ・ハッサンがデュランダル役とかぴったりじゃない?」
「スリラドロームのアーケードが視聴パーティーを主催するって話よ。私たち全員が…」彼女は「クラウドアークの中に入ったら」という言葉を呑んだ。
ふたたびため息が漏れ、沈黙が流れた。
数分が過ぎる。
エイヴァは大きく息を吸った。「何だか、怖くてさ」
「そうね」マギーは頷く。
「世界が終わりそうって時に、オンラインに隠れるんだもん」
「大丈夫、あなたが世界を救う責任を負わなくてもいいの」マギーはエイヴァの手に自分の手のデジタル像を重ねた。電気を帯びた粒子が彼女の肌をくすぐる。
「でも世界が終わるんでしょ。なら、ちょっと早く死んだって別にいいでしょ?」
マギーは肩をすくめる。「『レイダーインベイダー』の新作を逃しちゃうもの」
「新しい番組のために頑張るって言うの? そんなの…」エイヴァは首を振った。「…バカらしいと思う」
「いいじゃない。人生ってバカらしいものだもの」マギーは周囲全体をぼんやりと手で示した。「別にのんびり流されながら生きててもいいの。幸せの目印になる小さな踏み石が必要なら、その石を使えばいい」
エイヴァは付き添ってくれているデジタルな人物の方を慎重に見る。「そしてもし調子が良くなったら、世界は来週から救えばいいわ」マギーはそう言って勇気づけた。