The Grimoire Archive
グリモア トラッカー 書物

目的II

マラは単独で若きアハンカーラとの契約を見事に結んだ。このアハンカーラは宿主に敬意を払い、「リベン」という名を選んだ。アウォークンが後に「アナセム・アバドン」と呼ばれる現象から救われたのは、ひたすらにマラの意志と目的意識の強さのおかげといえる。マラにとって「在る現実」と「望まれる現実」の隔たりは薄く、幾世紀もの間育み続けた目的に対する自信、そして目標という大海へと至る手段である川を下る、回りくどい方法への忍耐力があった。祝福は全くの利己主義者が無私無欲となった時に訪れる。自らの真の知識の中に自己欺瞞の可能性を否定する者には近づかないのだ。 「マラ。なぜ私がアハンカーラと話すのを禁じるのです?」ユルドレンは問うた。 「この秘密は私だけのもの」と女王マラは答える。きょうだいの在りし姿(「ニューメ」と呼称)と在るべき姿(「コースト」と呼称)の溝がさらに広がっていることを彼女は感じ取っていた。「外界へ。あなたを必要としているのはそこなのです」 ケルダー・ウォージェとエシラと話をしたスジュール・エイドが女王陛下の御前にやって来たのはその時だった。膝をつきながら彼女は言った。「陛下。ケルダー・ウォージェより聞きました。陛下は神であり、その望みと現実の間には隔たりなど存在しないと。物事はその実現以前にあなたが望んだことであることも存じています。エシラは、あなたにはユルドレンに決して知られてはならない秘密があると申しておりました。その秘密とは、あなたがいつか神になるが故に、現在も神であるということではないでしょうか。なぜなら神は時空に縛られぬ存在。ユルドレンは神にならぬが故に現在も神ではないという事ではありませんか。陛下、あなたは私に崇拝をお望みなのでしょうか?」 「スジュール」マラは両膝をつき、愛するこの者の顔を震える両手で包みながら言った。「スジュール。あなたに崇拝される時、それはあなたが私を愛せなくなる時を意味します。崇拝とは、すべての力を相手に明け渡してしまうこと。私は、私に力を行使できぬ存在を愛することはできません」 この時、アハンカーラが彼女の首元にまとわりつき、あくびをしてその牙を見せた。「在る姿」と「望まれる姿」にはまだ乖離があったためである。 「ならば」スジュール・エイドは言った。「私にとって、あなたはまだ神ではないのですね」 いずれマラの未来を知ることで2人は互いから離れていくこととなるが、それは愛する友を遠き目標に向けて背を押すような、優しく喜びに満ちた離別となった。そして彼女らが共に過ごした日々は後悔のないものであった。