エルレッド・ラッシュに関する悲話
「エルレッドラッシュの話をしてやろう。奴は危険を顧みずにここを出て行くことはしなかった。馬鹿な奴じゃなかったし、厄介ごとが待ち受けてるって分かってたんだ。何も気にせず過ごしてた。気にしたところで、どうにもできなかったかもしれないが。
"奴は金鉱を探してた。ここに金が埋まってるはずだって、辺りをほじくり返して暮らしてた。でも本当の目的は、もっと個人的で、純粋なやつだった。死んで、埋もれた仲間を探してたんだ。エルレッドがあの奥地まで入っていった最初のガーディアンだっていう奴もいる。事実はそうじゃないが、そのほうが話としてしっくりくるし、伝説と呼ぶにもふさわしいな。
"ぐるぐる、ぐるぐる。ひとりぼっちのエルレッドは、岩のふり注ぐ大地をあるきまわりました。むちゃなことはできるだけ避けましたが、必要となればいつでもやり返しました。やさしい人でしたが、イライラした時は暴力にうったえることもありました。
"そしてとうとうエルレッドは、探していた場所を見つけました。おおむかしの崩壊から生き残った人びとが、最期に身をよせあった場所でした。かれが全てを失った場所でした。なにが起こったのかも分からぬまま、死んだ人たちを埋めていった場所でした。もう、昔々の話です。きちんと思い出すことはできませんでした。でも心は覚えていました。
"そして二度と、エルレッドを見た者はいませんでした」
C.C.ラグランジュ訳『フォールンの書——「入り組んだ岸辺」に関する覚え書きと観察』より抜粋