溺れしキャプテン(5)
「父さんは昔、溺れしキャプテン、フィザンと共にハウス・オブ・ダスクに仕えていたのよね?」エイドはあくまで気楽な声で尋ねた。
「あの者のことは誰もが知っている」ミスラックスは注意深く答える。
「頌歌では、数多くのカバルを倒した狂乱の戦士だと云われている」とエイドは口にする。「彼は勇敢だったって」
ミスラックスは何も言わず、ただエーテル呼吸器にある調整弁をいじった。
「違うの?」エイドは問い詰める。
「フィザンは無能だった」ミスラックスは唸るように言った。「あいつはかつて、六手の儀を点火したグレネードでやろうとして、自分のケッチの側面部を吹っ飛ばしたことがある。ふざけた男だった」
「でも頌歌は――」
「頌歌は子ども向けだ!」ミスラックスは本人が意図していたよりも強い語気で答えた。「あれは死にもの狂いを栄誉に、無知を勇猛さに書き変える」
落ち着きを取り戻した声で、彼はこう続けた。「書記官ならば、そのような夢物語の中から、真実を見出す術を学べ」