The Grimoire Archive
グリモア トラッカー 書物

アイリス

「お前、家に帰ったりはしないのか?」放浪者が質問した。 いるべき場所は他にもいくらでもあるスロアン副司令官は、数々の報告書と画面に向けていた視線を上げた。スロアンは放浪者の船の中に基地を構え、立ち去る気配をまったく見せていなかった。「今は忙しい」彼女は言った。スロアンのゴーストが彼女の左肩の近くで漂いながら、同意するように上下に動いた。「貢献しないのならどこかに行け」 「こっちのセリフだ」放浪者は不満を漏らしながらも、比較的グラグラしない椅子を選んでから彼女が広げていた資料を確認できる場所に腰を下ろした。「ハイヴか?」 「いつだってハイヴだ」スロアンが疲れ切った声で言った。 「宿られた兵じゃないときはな」 「そうだな」彼女は同意し、自分が放浪者に怒っていることを思い出してしかめ面をした。「手伝うんじゃなかったのか?」 放浪者は“ちゃんと仕事はしてますぜ、副司令官殿”と言うかのように両手を掲げた。「情報のひとつやふたつは提供できるかもしれないな」 「よし。お前は必要に応じて情報を教えてくれ。私は先にシヴ・アラスを相手にすべきだと考えている。サバスンは長期戦が好きだし、シヴ・アラスはもう戦う準備ができているようだ。シヴが先制攻撃を仕掛けてくるだろう。我々が罠を張っている最中に奴に剣を投げつけられるという状況はなるべく避けたい」 「シヴは剣が好きらしいぞ」 「貴重な情報をどうもありがとう」スロアンは指先で古ぼけたカードテーブルの端をトントンと叩いた。「シヴ・アラスが行動に出たら、戦闘で奴の力を強めずに奴を阻止するのは難しい。理想としてはこちらから先制攻撃を仕掛けたいところだが、そのためには奴が殺しを始める前に、適切な戦場を見つけなければならない」 放浪者は不本意ながらも、目を細めてスロアンのメモに目を通していた。青線で描かれた3次元のドレッドノートの描きかけの地図の端には、ハイヴの構造物の評価と、シヴ・アラスの企みの候補地が記されていた。「剣」という文字の下には、何度も線が引かれている。「やっぱり奇襲攻撃一択だと思うんだが」しばらくして、役立つことに抵抗を感じなくなってきていた放浪者が言った。 「そうだな」スロアンが苛立たしげなため息を漏らした。「今の奴は昔とは違う。エリスが奴を切り離してからはな。だからといって、優雅で平和主義的な解決策を練っているような時間はない。だからこそ、奴との直接的な交戦を避けるのが賢明だと思っている。奴の標的を狙うべきだ。誰を狙っているのかを特定し、先に倒すことで奴に捧げられる死を奪うんだ。そしてもし奴と戦うことになっても、奴が求めているような栄光ある戦いではなく、的確に、そして素早く終わらせる」彼女はやや不満げに肩をすくませた。「問題はあるが、何もないよりはマシだ」 「まあ、史上最悪の作戦ではないな」放浪者が正直に答えた。彼は椅子の脚で1本立ちになり、無造作に椅子を回転させた。「上手くいくと思うか?」 スロアンは彼に見透かすような視線を向けた。放浪者は彼女が自分に全神経を集中させていると感じた。「わからない。だが、上手くいく可能性があるなら、最善を尽くさなければならない。お前はエリスを信じてるだろう?」 「当たり前だ」 スロアンは短い間思い込むような仕草を見せ、ついに口を開いた。「なら上手くいく」 「そうだな」放浪者は彼女が喉元から溢れだすのを我慢している言葉を無視して言った。「よし。乗り掛かった舟だ。ルーセントブルードの目撃情報のリストは役に立ちそうか?」 「もちろんだ」