The Grimoire Archive
グリモア トラッカー 書物

螺旋とじの手帳、1967年から1968年

実験1: 亀裂は何の変哲もない見た目をしていた。我々の世界というカーテンに開けられた穴。その向こう側にあったのは… マイヤーズ博士はそれの色の正式な名前を考えているそうだ。 20センチ。サンプルAは6秒で劣化。サンプルBは30秒で劣化。ナピエの言った通りだ。サンプルが大きいほど劣化が遅くなる。わけがわからないが、結果を疑っても仕方がない。 モファット局長もそこにいた。彼は一言も言わずにずっと亀裂を眺めていた。 —————————————— 実験6: 24センチ。サンプルは159秒で劣化。よし、これは期待できそうだ。実寸大のスーツなら、小型の試作品よりも良い結果が出るかもしれない。 問題は物質だ。ディアブルレのスーツの関節部分は頑丈な上に柔軟で、繰り返し伸縮させても裂けない。研究開発部はその物質を複製できないようだ。「[不適切な表現を編集]な宇宙のゴムの木がないんだった[不適切な表現を編集]して失せろ」だそうだ。 ネレイダの潜水士だって自分の背中を掻けなかった。可動性と触覚もそうだが、いっそのこと覗き窓も要らないような気がしてきた。いや、そんなのマイヤーズ博士が同意するはずがない。ポリマーの構造を調整すれば、通常のゴムを覆えるほど薄くすることはできるだろうか? 今日はモファット局長が来て、日々の努力を感謝された。目の下にクマができていたが、アイロンをかけたばかりのスーツを着ていた。また別の査問に向かう途中だったのだろう。 —————————————— 実験14: 30センチ。プロトタイプは8分32秒で劣化。予想通り、真っ先にダメになったのはバイザーと関節部分だったが、少なくともガラスを改善する方法は思いついた。少し濁りが出るはずだが、視認性は許容範囲内だろう。 長期的な生命維持は不可能に近い。だがそれでもいい。長居する必要はない。10分あれば、3回は測定できるはずだ。念のため生存可能時間を倍にしておくのが賢明だろう。 —————————————— 実験25: アナリースと彼女のチームが大きな躍進を遂げた。162センチ。プロトタイプは12分19秒で劣化。 <ブルードア>は役目を果たした。次は私の番だ。 —————————————— 実験32: 今日はモファット局長が観測室に来た。彼は亀裂を見て、自分が誰よりも先に足を踏み入れると言った。 ぎこちない笑いが上がった。チームは彼の言葉を信じていなかったのだろう。 だがアナリースと私は彼が本気だと悟った。我々は3時間かけて彼を説得しようとした。そして、同僚たちが帰宅してからずいぶん経ち、ついに彼はもう1人が亀裂に入ることに同意した。「安全が確認でき次第だ」 会計年度の予算を考えると、別の寸法でスーツを開発する余裕はない。そして、チームの中で体型が一番局長と近いのは私だ。自分の命を賭さずに他人に犠牲を求めることは、科学者ないし人として恥ずべき行為だ。