和解
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放浪者に腹を立てる理由がまたひとつ増えた。あいつをイスに縛り付けて、腹を蹴って顔面をぶん殴ってやりたい。自分をわかってくれる人がいないとあいつはダメなんだ。誰かがあいつの歯止めになってあげないと。
あいつに必要なのは、あいつのゴーストだ。
A.M.――プラクシック観測60: IIIの甲高い最後の息は、落ち着いた鈍い低音に変わった。幸運なことに、その音はたいていの人が認識できる閾値よりも、1デシベル低い。そして奇妙なことに、静かな夜にその音を聞くと、なぜだか心が落ち着く。未知の沈黙よりも、死の唄の方が安心できるのだろう。
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あいつが私にとってどれだけ大切な存在なのかは、これから先もずっと伝えることができない。あいつは昔から私を突き放し、腫物のように扱ってきた。
こんな悲惨な関係なのに、それ以上のものを求めてること自体が馬鹿げてる。それでも、あいつに伝えたいという気持ちは変わらない。
A.M.――プラクシック観測68: タワーの住人の間で「カイアトル病」という咳風邪が流行っている。この俗称は、咳が女帝の笑い声に似ていることから定着したようだ。なかなか滑稽な状況ではあるが、タワーにおける健康水準が低下しているというのも事実だ。症状が悪化するのも時間の問題だろう。
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自分に正直になろう。私はあいつを責めすぎてる。全部が全部、あいつのせいじゃないってことはわかってる。
あいつは完璧な人間じゃなかったけど、それでも私のものだと思ってた。でも、最初からそんなことはなかったのかも。あいつは過去と一緒に私を置き去りにしたんだ。
A.M.――プラクシック観測71: カイアトル病の治療法を模索中に、何にも干渉されずに動き回る高密度の鉱物を見つけた。石はIIIの核の鼓動と温かさを求めて、地上を奔放に飛び回っている。目的を失い、放浪する鉱物たち。治療薬に使えるかもしれない。
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新しい世界が見たい。私の理想のあいつがいる世界。その世界でなら、私も今以上の自分になれるはず。あいつと私と、私たちだけの世界。他には誰もいない。ふたりで好きなだけ自分勝手になれる。
言葉が話せなくなったのは、悪いことじゃなかったのかも。