The Grimoire Archive
グリモア トラッカー 書物

嵐の海の暁旦

暁旦の度に、顧客からたくさんのカードが届く。一番嬉しいのは、太陽系中の人々がどうやって祭日を祝っているのかが書かれているもの。中でも特に嬉しかったのは、一度だけ出会った顧客から来た手紙。土星の衛星の一つであるタイタンに住む、ストーンボーン・スロアン卿から届いたものだ。 「親愛なるエヴァ 暁旦おめでとう。 まず最初に、配達を受け取った、ありがとう。注文はすべて完璧な状態で届いたし、チキンの梱包も素晴らしかった(チキンについてはまた後で書こう)。司令部の外の柵をイルミネーションで飾ってみたのだけど、フォールンが光を使って射撃訓練をし始めてしまった。来年は、代わりに休憩室を飾ろうと思う。暁旦のランタンも風でいくつか吹き飛ばされた——メタンの海の天候は、穏やかだとはとても言えない。 タイタンで手助けしてくれているガーディアンたちから聞いたのだけど、シティ外の暁旦の話を聞くのが好きなのだな。私たちが故郷と呼ぶこの衛星での祝い方を紹介しよう。 今年は司令部で暁旦の夕べを過ごすために、乗組員には16時までに仕事を切り上げてもらって、私自身も1時間の休みを取った。 セイレーンの監視からは波や浮桟橋が綺麗に見えるから、休憩室のテーブルをくっつけて、水平線を見ながら皆で宴を楽しんだ。部屋が風に晒されていて(ずいぶん前にガラス窓が割れてしまったのだけど、修理は後回し)、デルとアリは服を着込まないといけなかったし、金属の塊でテーブルクロスの端を抑えないといけなかった。これくらいまだマシな方だが。 エヴァ、食事は絶品だった。あのチキンも美味しかった。みんなで一口ずつ食べられたよ。タンパク質のレーションを色々な形に切って、あのタフィーを十分に温めて齧ったときと言ったら、まるで天国だった。 暁旦のプレゼント交換もした。営舎に飾るために「心に響く言葉」の刺繍を作ってくれた人もいた(「私のビーコンはどこ?」っていう内輪ネタだ)。道具やヘビーウェポン弾や分厚い靴下——ここではそういった物を贈り合う。タワーの暁旦に慣れている人たちにとってはつまらない物かもしれないけど、私たちにとっては素敵なプレゼントだ。 その後で、暖を取るためか、祭りを楽しむためか手を取り合った。それまでは話したことがないような話をした。進んで自分の話をしたことなんて生まれて初めてだった! カバル大戦前の生活の話や出身地、将来の夢まで話したんだ。 この暴風の衛星で暮らすのは簡単なことじゃない——浮桟橋から振り落とされたら一巻の終わり。フォールンとハイヴと風に囲まれて、いつも生き残るだけで必死。でもあそこで座って話をしているときは、生きているという実感があった。 これを書いたのは、お礼を言いたかったからかもしれない、エヴァ。あなたは、どんな時でも忘れずに祭日を祝い、楽しむことの大切さを思い出させてくれた。心に響いたよ。 敬具 スロアン」 私は地球から離れたことがないけど、タイタンは… とても面白い場所のようだわ。この祭日のおかげでそんなに遠く離れた人たちが一つになれたなんて、頑張った甲斐があった気がする。 いつかまたスロアンに会えたら素敵。 --- アルカンドラジェ・クッキー: キチンパウダーと弾丸スプレーを混ぜて、暁旦のエッセンスを加えてから焼く。